相続人が認知症でも、相続手続きはできる?
相続人の中に認知症の方がいる場合、遺産分割協議などの手続きが制限されることがあります。
遺産分割協議はできない場合がある
遺産の分け方を決める「遺産分割協議」には、相続人全員の参加が必要です。
相続人の中に認知症で判断能力を失っている方がいると、そのままでは協議が成立しません。たとえ署名や押印をしても、法的には無効になります。
この場合は、家庭裁判所で「成年後見人」を選任する必要があります。
手続きが可能なケース
認知症の相続人がいる場合でも、次のようなケースでは手続きを進められます。
遺言書がある場合
遺言書の内容に従って相続できるため、協議は不要です。
ただし、遺言が無効であったり、分割方法が書かれていない財産があると、協議が必要になります。
法定相続分による登記
不動産は、
法定相続分どおりに相続登記することが可能です。
ただし、共有名義となるため、売却や処分には全員の同意が必要となり、現実的には運用が難しい場合があります。
判断能力が残っている場合
初期の認知症であれば、
遺産分割の内容を理解できると判断されることもあります。
ただし、後日トラブルになる可能性もあるため、医師の診断書を残しておくのが安心です。
手続きを放置するリスク
「成年後見人をつけるのは面倒」と後回しにしてしまうと、次のような問題が起こります。
- 故人の預金が凍結されたまま引き出せない
- 不動産の売却・解体・管理ができない
- 時間が経つと相続人が増え、話し合いが複雑になる
令和6年4月からは相続登記が義務化されており、
3年以内に登記をしないと
10万円以下の過料が科される可能性もあります。
成年後見人をつける場合
成年後見人は、認知症などで判断能力を欠く人に代わって財産を管理する人です。
家庭裁判所への申立てが必要で、本人・配偶者・4親等内の親族などが請求できます。
選任には手数料や鑑定費用などの実費がかかるほか、専門家が後見人に選ばれた場合は月2〜6万円程度の報酬が必要になります。また、後見は遺産分割が終わっても続くため、継続的な費用負担が生じる点にも注意が必要です。
相続開始後に対応すると複雑になるため、事前の準備が重要
遺言書を作成する
法的に有効な形で作成すれば、遺産分割協議をせずに相続を進められます。公正証書遺言にしておくと確実です。
家族信託(民事信託)を活用する
認知症になる前に、信頼できる家族に財産管理を任せておく方法です。生前の資産凍結対策として有効で、死後の財産承継も柔軟に設計できます。
相続人に認知症の方がいる場合は早めの相談を
認知症の方が関わる相続では、成年後見や登記、協議手続きなど専門的な対応が必要になります。
京都市中京区の弁護士 戸田洋平は、成年後見・遺言・家族信託まで一貫してサポートしています。相続人やご家族に認知症の方がいらっしゃる場合は、トラブルになる前にぜひ一度ご相談ください。初回相談は無料・秘密厳守で承っております。


